2018年12月13日木曜日

関西将棋聖地巡礼の旅

近頃はめっきり寒くなりましたね。穴熊できっちり囲ってぬくぬくしたい季節になりました。そうです、今回は将棋の話です。平野です。

私は物心つく前から母方のお祖父ちゃんに将棋を仕込まれていたのですが、ルールは覚えたものの毎回お祖父ちゃんにボッコボコにされるので嫌気がさして当時はあまり将棋が好きではありませんでした。
改めて将棋にハマったのは、約半年前のことでしょうか。藤井ブームではありません。りゅうおしです。それ以上深くは語りませんが、作者の白鳥士郎先生はライトノベル初の将棋ペンクラブ大賞を受賞し、今では叡王戦の観戦記者なども務め、羽生竜王や藤井七段など名だたるプロ棋士の方々にもインタビューを行ったすごい方です。
少々特殊な類のコメディ要素がありますので、近年のアニメ・マンガ文化において柔軟な価値観をお持ちの方はご覧ください。アクは強いですが、本質的な将棋部分は、とてもここでは語り尽くせないほど緻密です。

ともあれ無事将棋にハマり直し、穴熊の意味すらわからなかった小学生時代を乗り越えて振り飛車党となった私は、先日大阪に出張中の父の下を訪ねる機会がありました。となれば、真っ先に行くべき観光名所はただ一つ。二条城でも通天閣でもありません。

関西将棋会館です。


ご覧下さい、この堂々たる偉容を。
左奥に見えるのはかの有名なレストラン「イレブン」、
右手前にはおなじみの案内看板。
二階部分、青少年研修室の窓には若者らしい荷物が覗いていました。
主に26歳以下、下限なしの奨励会員の方々が
余人の思慮の及ばぬ研鑽を積んでおられるのでしょう。感銘を受けます。

入り口の様子。アニメでは何度も見ましたね。


奥に映っている女性ファンの方とは「私、神奈川から来たんです」「そうなんですか!千葉からです」という会話をして盛り上がりました。その他にもひっきりなしに観光客が訪れる、食文化以外に名所が少ないと言われる大阪では関西将棋会館は間違いなく立派な観光名所となっていました。


入り口手前右側にある、物販コーナーの一面。

一巻でも八一とあいが扇子について話していましたね。
実際の棋戦でもプロ棋士の方が持ち込むこともある扇子。
一つ一つ、プロ棋士や女流棋士の方直筆の文字がプリントされています。
久保利明王将や谷川浩司九段、丸山忠久九段佐藤天彦名人など、そうそうたる名前がズラリ。若手将棋棋士ユニット「西遊記」としてりゅうおしの監修に参加なさっている豊島将之二冠のものや、新旧タイトルホルダーだけでなく著名な女流棋士の方のものも。

藤井聡太七段の「専心」、里美女流四冠の「心華」など、印象的な言葉が並びます。

壁面の案内板。

1Fはレストランと売店、2Fは将棋クラブと青少年研修室、3Fは事務室と棋士室と宿泊室、4Fは多目的ルームと対局室、5Fは江戸城本丸御黒書院、となっているようです。
1Fは一巻からモデルとして登場し、実際にプロ棋士や女流棋士の方を見かけることも多いというレストラン「イレブン」が。
2Fは七巻にて清滝師匠と鏡州三段との二度のやり取りが印象的だった、練習対局のため奨励会員の方々が主に利用しているという青少年研修室が。
4Fはプロ棋戦の順位戦やタイトル戦の挑戦者決定までの対局などが行われる対局室が。
5Fはタイトル戦の最終戦が行われる例の和室があるということになります。(タイトル戦の会場は固定ではありませんが)

壁のさりげない王将駒。
背景として何度か映りこんでいた記憶があります。

盤駒も展示、販売されています。

6巻での盤駒に関するエピソードはファンなら忘れ得ぬものでしょう。
関西将棋会館にも、盤駒が購入可能な状態で展示してあります。
(そういえば、道具屋筋には行きそびれました……。またいずれ。)


9巻女流タイトル戦でも使われた六寸盤。
袖の長さには気を付けましょう。

廉価な物から高価な物まで幅広く、その中には「本榧 柾目」の文字が。感無量です。

盤駒づくりに携わる職人の方々の息吹を感じられます。

こんな珍品も。

倉敷藤花戦のポスター。

壁には何枚かのポスターが掲示されており、その中には山城桜花戦のモデルとなった倉敷藤花戦のものもありました。
八巻の鴨川河川敷での月夜見坂女流玉将と、タイトル保持者の供御飯山城桜花との最終盤での目隠し将棋は非常に熱いものでしたね。
実際には京都ではなく横溝正史で有名な岡山県、倉敷市にて行われます。
里見香奈女流四冠と谷口由紀女流二段が戦い、里美四冠が三連覇を成し遂げました。

ポスターは他にも何枚か貼られており、プロ棋士による将棋講習会の告知なども見かけられました。
年齢制限で奨励会を退会してからプロ棋士となった数少ない棋士である瀬川晶司六段や今泉健司四段の名前も見かけられ、作中でもモデルになっていることを考えると改めてプロ棋士という職業の近さと遠さに驚きを感じます。

入り口の車輪式看板には、大判解説会の文字も。

大判解説は、作中でも何度も行われていましたね。
キャラクターとしては鹿路庭女流二段のなりふり構わない熱意がとても好きなのですが、先日インタビューでも貞升南女流初段が聞き手としての心境を語っておられました。
男性棋士やタイトルホルダーは現在の女流棋士からすれば棋力の差の大きい相手となりますが、そういった方を相手取っても物怖じせずに積極的な姿勢でいることが、棋士として強くなっていく秘訣の一つでもあるのでしょう。


見慣れた御姿のエレベーター。
これに乗って上から降りてくるということは……
すれ違うだけでも、緊張します。

レストラン「イレブン」の外観。

メニュー表。

レストラン「イレブン」はあとがきで白鳥先生も何度も利用され、プロ棋士や女流棋士の方々が訪れることも多いとのことでした。
バターライスはあいが、ダイナマイトは銀子が、珍豚美人は八一が食べていたシーンが記憶にあります。


と、そんな所で関西将棋会館の巡礼は終わったのですが……実はもう少しオマケが。
関西将棋会館に近い福島駅(大阪駅付近)から南へずずいっと下った、天王寺駅付近。

大阪有数の繁華街、「新世界」。
その南東部の一角、ジャンジャン横丁です。

繁華街であると同時に、お世辞にも治安が良いとは言えないダーティーな賑わいを見せる街並み。さながら一昨年度の夏合宿で行った台湾の夜市ような空気感の中に、いかなる将棋の聖地があるのか? ……いえ、もうおわかりですね。

将棋道場、「三桂クラブ」です。

真剣な眼差しで将棋を行うお客さん方。
この中には、何人の真剣師がいるのでしょうか。

将棋道場といえば、りゅうおしだけでなく『ハチワンダイバー』などで印象深い方もいらっしゃるのではないでしょうか。そう、煙草に紛れた紙幣をやり取りする賭け将棋によって火花を散らす、浪速の真剣師たちの戦場と名高きあの場所です。
全国にある将棋道場のすべてが「それ」というわけでは勿論ありませんが、この三桂クラブに漂う異質な空気感は、明らかに別世界のものでした。登山における「下界」のように、彼らにとって「盤外」とは、ここではない外のこと、なのでしょう。


壁には「初心者歓迎」の文字が。

新世界の将棋道場と言えばもちろん二巻での天衣の修行風景ですが、「級位者歓迎」の文字を探したところ、「初心者歓迎」という言葉を見つけることができました。
「将棋で一番楽しいのは、圧倒的に勝った時」。
だから、将棋クラブはいつでも弱者を歓迎している。負けてもらうために。常連さんへの供物として、苦渋を舐めてもらうために。
そして――そこから這い上がってきた、新たなる獣を産み落とすために。

なんてスリリングでアングラで、だからこそ魅力的な世界でしょうか。
狂人の誹りを嬉々として受け入れんばかりの、歪むことさえ悔悟せず、神をも恐れぬマグマの如く燃え滾る将棋愛には圧倒されるばかりです。
小説界隈にもそんな場所があったら……恐らく、私は大学に入学していないでしょうね。

関西将棋会館前の横断歩道。
一巻中盤、そしてアニメ二話での神鍋歩夢戦後の八一とあいの会話が印象的でした。
夜が明けるまで粘り続けた、泥臭い関西将棋。
紛れもなく、それは現実の将棋にも通底する、将棋ファンを惹きつけてやまない
9×9、八十一マスの中に広がる無限の世界に宿る、熱量の真髄なのでしょう。


というわけで、関西将棋(アンドりゅうおし)聖地巡礼の旅は非常に充実したものになりました!
偶然にも観光で行った二条城のイベントに女流棋士の方が訪れていたと後日知ったりと、将棋運のよい関西観光となったように思います。
就活などで忙しく、うっかり胃腸炎(軽い)になったりもしましたが、またエネルギーを充填してがんばっていこうと思える小旅行でした!

追伸:ちなみに将棋ウォーズおよび将棋倶楽部24では若輩ながらちょくちょく指させていただいています。お読みになった方、よろしければぜひ一局。ウォーズでは3級~5級、24では12級ぐらいです。

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